いわ。チェホフはうちのロシャートカと細君をよんでいますが、馬さんはあんまり一般的すぎます。ブランカには悲しいところがあるが、実感がありますね。少くとも私は、ほら、ブランカと云われると、すりよりながら身をひきしめて自分の生れながらの不束《ふつつか》さをきまりわるく思いながら、やはり傍からどけない(くことは出来ない)というような思いになります。大変精神的であり又生々と動物的でもある思いです。
 小説のことは本当にありがとう。私としては自分個人としての焦慮というよりも、対処の方法で縺れさせたのであったと思います。
 その点が自分にとってもはっきりして、根本的にどうやって行くのが一番よいかと方針がわかると、あとの処理はすべて比較的簡単になり、落付いた気分にもなり、うれしいと思います。普通の勤め人とちがうというのは全くです。大事な人を一生自分にとって大切な人としとおすには、やはり意志がいるように、大切な自分の仕事を自分にとって一生大切なものとしとおすには、やはりかくれた勇気もいるものです。おっしゃるとおり波瀾万丈ですから、それを面白いとうける力は、その波をおこしている勢についての正しい理解以外に
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