る家を建て終せて、この頃はお髭のちり払い専門になっているというような型もあり。儲けられない筈のところまで波が打って来る時は、もう中心では別の動きがきざしているというのが現実であり、大正九年の大暴落にしろそうですものね。私が家を建てないと云うと云って吉屋信子が笑ったそうだが、私なんかには少くとも経済上のそういう持続性は信じられなかったのですし、それが本来でした。
 ところでこの間送った原稿ね、あれをうまく戻すのはむずかしいらしくて困ります。もう詮衡ずみで、角だつらしくて。もうすこし考えて(方法を)何とかなればよし、さもなかったら今回だけかんべんして下さい。お願いいたします。円地という女の作家が委員の中にいるから、もう少し工夫してみます。本当に、ひょいと考えの二本の筋をこんぐらかして、おしいことをしました。
 生活の方法について、御考え下すって有難う。島田の御親切は私も単純にうけてありがたく思います。しかしそれ迄に私としては、東京に生れ、そしてここに育った者としてとれる自然な方法が少しは在るでしょうと考えて居ます。家族としても、ね。いろんな面がきりつまれば、食うために生きているのでない以上
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