でなくて日常的でずっと健全であり人間らしさを保って居ます。銀座で何も実質的買物をする必要のない人々が東京に何十万といます、だから、銀座なんかが真先にがらんとするのは自然のなりゆきです。銀座が寂しくなったということはしばしば聞いたが、そのことで銀座の本質が示されて居ると云った人はありません。生活のしみじみとしたところを見落しがちなものね。
宗達という装飾画家のこと御存じでしょうか。俵屋宗達と云って寛永年間の人、土佐派の出で光琳、光悦の先輩の由。この人の描いた源氏物語絵巻のエハガキを偶然みて実に気に入り、光琳のように装飾のための装飾、図面の固定化、様式化しすぎた大名菓子のような死んだところがなく、力づよく清新、男らしい構成力があって、つやがあって(大したほめ方でしょう?)本当に近頃うれしいものを知ったと思う画家です。この人は十分の技倆をもった写実家です。それを土台として、伊勢や源氏の絵巻をかいていて、コムポジションの頭のよさ、牛車をひいている牛や人間の重厚さ面白い。その人の絵は何故か余りエハガキなどにされなくて伝記もないようです。造形美術という雑誌に出ていたから、とうちへ泰子の服を縫いに
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