た光りに照らされた安全地帯と、月光で互の顔を見分ける銀座二丁目とをあなたに想像お出来なさいましょうか。安全地帯の端の赤い標識柱のわきに身をよせて若い女のひとがぼんやり立っているうしろからヒョッコリ男が現れると、私は何だかふつうでない――用心する瞬間の気になる、そんな銀座がわかるでしょうか。殆どすべての店は厳重に表戸をおろして居ります、夜店がマバラに、もうしまいかけの時のようにポツリポツリとあって、はだかの電球の光が低く流れています。似顔絵切りぬきが、覆いをかけた灯の下で街角にいて、たかっている人がすこしある。八時すぎ、日曜日、でももう深夜のようでフラフラしている人はない様子でした。出たらきっと驚く、と云われていたけれど、全く強い印象をうけました。銀座の表通りのような都会的消費の町は、こういうときほんとうに早く表情を変えますね。昼間は今でもやっぱりさもしき[#「さもしき」に傍点]ハイカラーがふらついているのでしょうが、すこしくらくなり、たのしみがなくなると、こそこそとどっかへ消えてしまう。戸塚や動坂や、ああいう、生活している人間がいる人間がある以上店も入用というところの方が、雰囲気が病的
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