せん。女の子たちの着物の色が染色の関係からどれも泥絵具式に混濁していて、所謂キレイな色ほどひどく濁り、それに布地の節約からおそろいの服をつけている姉妹が大変目につきました。電車へのったら人々の持ちものが元とは大変ちがっていて、大抵の人が形のまとまらない、つまりぶかっこうな風呂敷包みかかえていて、四合ビンをもっている人も大分います。省線の夜野菜のはみでていない風呂敷包はないし、という話をきいたが、これではそうでしょう。ちょいちょいした粉だの菜っぱだのというものの包みは、正直に自分たちを主張していてスマートな形にばけるという術は知りませんから。
 荷物に表現される生活状態というものは生々しいものです。たとえば上野駅を出入りする荷物と東京駅とでは何というちがいだったでしょう。クールスキー停車場に出入りする樺製カバンの形と、ガール・デ・ノールのワードローブ・トランクとは何とちがったでしょう。でも、今日は東京駅も上野も互に近づきました。そして荷物として動く荷物は、世界中似ているかも知れないわ、カーキ色の被いをかけて。大したものであると、つくづく感じました。八時すぎ家へかえりましたが、月の青々とし
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