ら毎日一二枚ずつ書いて出したら二十三日前に着くでしょうか。気をつけて少しずつしか書かないから大丈夫です。丁度日向に長くいて日かげの部屋へ入り、そこでものを見ようとするとマクマクでしょう。あんな工合にこの紙や字が自分に見えます。
 今のところでは今年も割合暖いようですね、昔の冬は春のようだと思えるほどの時もあったりしたけれど。
 この頃、私はもととは流儀をかえて、夜眠る前にいろいろ考えるよりは寧ろ朝めをさまし雨戸をあけて床に永くいるときに、静かで暖かで新鮮になってどっさりのことを考えます。明るい月の流れ入る窓の詩は夜のうたではあるけれども、あれはうたの心の天真さやまじりけのないつよい歓びの情などから朝の光のすがすがしさとも実によく似合います。一層美しさが浮き立つようよ。そしてそのような熱くてすき透ったような詩趣は朝のうたの諧調をも同じように貫いて響いて居ます。なじみ深い愛誦の詩をまた再び声を合わせ格調を揃えて読もうとする気持は何にたとえたらいいでしょう。
 残念なことに私の物をかく力はまだあの詩ものがたりの旺盛なやさしい諸情景をこまかく散文にかきなおしておなぐさみとして送るまで達者になっ
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