臥《ね》た晩に(父、子が下へ降りて、私一人で眠れるようになった晩)大変綺麗な面白い夢を見て、またの時、スエコを掴え、その話を書いてもらうのが楽しみです。その夢の話をきけば、私がやっとこの頃ゆるやかな神経で横にもなっていることが判っていただけるでしょう。
 風邪をおひきにならないように。ほんとうに頭から一寸物をかぶると暖いらしいことよ、かつぎのように。

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[自注1]ペンさん――百合子の眼のわるい期間、代筆等を手伝ってくれた娘さん。
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 一月十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 一月十六日
 十二日づけのお手紙をありがとう。その御返事というわけでもないのよ。約束を守らないとお思いになるかもしれないけれども、この間うちから我慢をつづけて、代筆で。でも、明月詩集[自注2]の物語ばかりは誰に書かせたら私がたんのう出来るものでしょう。しかも、「しきりに寒夜月明の詩を思う」と書かれているときに。そうかいたのは誰でしょう。
 去年よりは小さい字が書けるようになったでしょう、依然としてぎごちなくリズムが欠けていて妙ですが。
 きょうか
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