用の五Bでかく様子が御想像になれますか。坐ってものをかくことも馴れないと、よそへ行ってチャブ台で何かするのに困るでしょう? あなたはずっと坐る机で、くたびれると、よく畳へ背中をおのばしになったことね。坐る机だと、休むときああしたくなりますね、私はふとんをのべてあるの、そして背中がつまると、そこに横になります。
いろいろの道具だてばかり云っている人の間にいると、どんなに其が一つの不便で、不幸でさえあるかと思い、自分はあなたのおっしゃる口真似ではないが、全く、机、ふとん、紙、エン筆さえあれば安心してやってゆける習慣をもちたいと思います。小説というものは、どんなところででもよまれるべきものですから、云わばどんなところででもかかれていいわけなのでしょう。又面白いことに、そういう風に作者の腹と紙とが同一水平でとけなければいい小説も出来ないところもあったりして。
ぐみ頭のことにふれ、それもわるくないと書きましたけれど、負けおしみではないようです。そして、こんな風に思うの。私はこれから主として小説だけ書き、ほかの作家とまるでどこかちがう小説をかきたいものだと。つまり小説しか書けない頭ではなくてか
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