ころだからついそちらへ引かれるが、鷹の巣の方がよさそうだと自分を納得させたくて、くどくどやっているらしいわ)春から又一かわりいたしましたから又手紙を出してきいてみましょう、きめるのはその上でのこと。何もそうてん[#「てん」に傍点]からきめてかからないでもいいけれど、夏でしょう? だから弱るのよとてもこむし。汽車はこの頃、べん当等しろうとには買えないのよ。梅干握飯持参でなくては駄目。従って途中も一人では無理ということなのよ。今年島田は行けますまい。友ちゃんが十月にお産と云えば九月以降から十一月はふさがりますし。来年はもう父上の七回忌に当ります。六月にはよほどのことのない限り上りたいと考えていますから、今年はやめて、却って来年早くから行って御法事すまして六月十日までに帰れば六月十三日の母の十年祭に間に合うことが出来ます。明日は母の九年と英男の十五年祭で神官が来て祭典をいたします。夜は初めて(私も)外で家族だけ食事をします。足かけ三年目の夜の外はどんなでしょう、それはそれは暗いって。銀座なんて初めてですからさぞおどろくでしょう。
魔法ビン火曜日ごろ届けます。けれども、もう少し待って、山梨からお医者様が帰ってからにしましょう、ましなのがあった方がよいから。森長さんへきくこと承知いたしました。『週刊朝日』もうちゃんと契約出来ましたから御安心下さい。二十日の分お送りいたします。隆治さんのこと考えていても仕方ないから、こんなものや何かでもとにかく送ろうと思います。『婦人朝日』は五月三十日で廃刊です。あの種のものはどんどんなくなります。岩波の文庫はもう殆どありません(出ないの)。
魔法ビン来年広島でさがしてみましょう。案外あるかも知れないわ。金庫屋が樺太まで行ってものを仕入れるとききましたが、私たちも魔法ビンではなかなか内地を股にかけるわけとなりました。でもマホービンだからまだ面目が立つわ。細君がこっそり指輪買いに秋田辺へ行ったりして問題を起すよりは。きょうは、きのう出かけて(一日ずって)少々へばり日ですからこれでおやめ。週刊は人々の親切でとれました。
六月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
六月十五日
けさはひどい雨ふりでした。いい心地で雨の音をききながら、きょうは火曜日でくたびれ日故、朝七時半ごろおみおつけとパンと玉子を床でたべて又昼迄横になって
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