ら、早さも特別に感じられます。
 二十九日附のお手紙、三十一日午後頂きました。
 今頃はもう後の手紙も御覧でしょう。
 夏蒲団は昨日どてらを届けた時持ち帰りました。毛布、下ばきも届きました。毛布はもう洗濯に出しましたが、恐らく一ヵ月以上かかりますからどうぞそのおつもりで。下ばきは惜しいことをしましたね。あんないい薄い毛のものは、全くどこにもないものです。それが虫喰いだらけで丸でイルミネーションみたいに日光をすかすのを眺めると、さすがの私も「まあ、きれいね!」というより先に「あらアー」と情けない声を出しました。しかしとても捨てることは出来ないから、何れ一つ一つをつくろいましょうが、人に頼めるものでもなし、まあ来年のお楽しみね。あれを一つ一つつくろったのが届いたら、それは完全に豚妻の眼がよくなった証拠といえましょう。
 用事帳云々のくだりは特に二人で眺めて合称[#「合称」に傍点]しました。その帳面のこちらの名は「ジゴクノテチョウ」と赤鉛筆で書いてあって、特に赤いリボンがつけてあります。アラームの意味です。忘れるとベルでも鳴ればもっと調法でしょう。(そしたらペンさん曰く、私の三角の袋の中でビ
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