れよ。
さて十六日のお手紙へ。
ビタミンBは一日の必要量は四ミリだそうで、私はメタボリンの六号を注射していて、それは五ミリです。一日置きに十ミリずつと、Cを十ミリ位ずつやっていますから、B1[#「B1」は縦中横、「1」は下付き小文字] の服用は今のところ必要はないそうです。咲枝さんが入院してしまうと、私は奥さん代りで気が落付かないから、一日置きに先生に来てもらう事はやめて、その間はメタボリンの錠剤とレドクソン(C)を飲み、若しそれで故障がなければ、来年の二月位までそれでやって、春から夏に備えてまた注射を始めようか、と思っています。お出で下さる先生は、所謂うるさ型で細々したくだらないことが気遣いのような質の人です。例えば自分が注射してもらっているのに、お茶菓子の心配をしているというようなのはいやですから、咲枝さんの留守はおやめです。一回十円も安くないしね。(然しこれは博士とすれば割引ですから苦情は言えません)この先生は親切は親切ですが、長年開業医としてだけ暮してきた生活態度がしみついていて、勉強好きなのも一種の穿鑿《せんさく》好きのようなもので、学問と生活態度とが散り散りばらばらです
前へ
次へ
全137ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング