日「蒲団の様な顔」をしていたそうで、その疲れです。勿論明日は大丈夫。毛糸のジャケツ上下。手袋。お金。封緘。ビタス。等、明日発送します。くわしく又手紙で。十七日は奇想天外の一日でした。用事帳は早速こしらえることになりました。
十月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕
十月二十七日(今日はああちゃんの出産予定日なり)ですけれども幸い今のところは平穏無事で丸いお腹は納っているので、私達は二階で何日ぶりかのゆっくり手紙書きを始めました。
今日はいい秋日和。空気がカラリとしてほっぺたがぽっと暖かいような日。こんなにいいお天気だと如何にもいい気持だけれども、私はまぶしくて自転車に乗って庭を廻っている太郎の顔なんかは真白な光の塊りにみえます。そこで思うには、昔の人が仏に後光がさしているとみたのは、きっとだいたい貧しい人で、少し眼が悪くて、自分たちの不運をお助けあれと願った時、きっとそれはピカピカ光ってまぶしくて白く後光がさしているようにあらたかだったのでしょうね。馬鹿な詩人は少年の顔から後光のさす浄かさを感じるかも知れないわね。ところが太郎は健全なる人間の子で泥まみ
前へ
次へ
全137ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング