夜着は月曜頃どうやら運べそうです。

 十月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 小磯良平筆「バタビヤにて(人物)」(一)[#「(一)」は縦中横]、宮本三郎筆「印度の女」(二)[#「(二)」は縦中横]、脇田和筆「幼児」(三)[#「(三)」は縦中横]の絵はがき)〕

 十月九日(一)[#「(一)」は縦中横]
 器用な絵だことね。こういう絵をみると環境や歴史性がわからなくて不思議のようですね。描かれている女の人達は、でも皆んな真面目な自分の顔をしていて、それが取り柄です。この画家のジャ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の土人の踊りをスケッチしたものは、リズムがあって面白いものだそうですが、生憎そちらは売っていません。ペンさんがこういうものを心掛けてくれるので、私は随分楽しむし、そちらへもお送り出来ます。ペンさん同情して曰く、「代筆の手紙なんて気の毒だ、きっと読んでいるような、いないような気がするだろう」こういうことを言える人なんだからすみに置けません。

 十月九日(二)[#「(二)」は縦中横]
 この前の灰色の角封筒がそちらに無事つきましたか? この頃封筒の大きさが統制され
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