てで、強制的に強奪されたかが割合正しい率直さで語られているし、そう云う背景で理解する人には、興味がありますが、さもないといかにも十九世紀の始めらしい流れののろい描写で、退屈するようです。家の先生も上手な読手に拘わらず、むしろペン代用となる方をより興味あることとする傾向があります。(私にはよく見えないけれど、字がだんだん速記的になって来たそうですが、本当?)外交的ヒントと云うものはこう云う形で与えられ、決していきなり「もう手がだるい」とは云わないものと見えますね。(これは内緒話ですが、私はいつか、目をしかと見開いて、何枚書いても速記的にはならない字で、スエコがこっそりのたくらしている現場をつき止めたいものだと思います。)
ロマン・ロランの「魅せられた魂」は完訳され、一巻と四巻と云う風にとびとびに読みましたが、「ジャン・クリストフ」はお読みになったでしょう? あれとくらべてこのアンネットと云う女主人公をもった長篇は、女である私達には、非常に興味深い観察が促されて、ずっと読んだらば、さぞ面白い感想がまとまるだろうと思います。生活に一貫した自立性を求めて行くアンネットの理性と情緒的な物との見
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