さい女の子が笑っている
「お父ちゃまと一緒に
入りたいんだってえば」
母はなおミシンを動している。
やがて女の児がつれ去られ
泣きつかれた男の児は
そのあとへ這い込む
九歳のしなやかな
日やけ色の手脚をまるめて
名もなつかしい
|おじいさん椅子《グランドファザーチェア》は
おだやかに 大きく黄ばんだ朽葉色
気持の和むなきじゃくりと
ミシンの音は夢にとけ入り
時計はチクタクを刻む
となりの子供は
みんな出払った 休日《やすみび》の宵。
十二月十一日
十二月十四日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 コロー筆「樹陰」の絵はがき 速達)〕
十二日朝の速達戴きました。(十三日)
隆治さんに送る物に就て、はっきりその後の様子を申上げなかったので、気を揉ませて済みませんでした。七日に間に合うよう、電報をして、品物を揃え、母上から隆治さんに渡していただきましたが、ウィスキーや、磁石は、もしないといけないと思って、小包で島田宛送って置きました。書留小包にすると、割合早く、確に着きますから、二十五日頃もし出発が実現しても間に合うでしょう
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