りして本当に厄介ね。毛布が送れて一安心。どてら、いつ縫って来るつもりでいるのでしょう! そうそう牛込の荷物ね。あのなかにはオリーブ色、細かい格子の裏の絹の丹前があっただけでポンポコはありませんでした。あの昔のなつかしい染ガスリの夜着のようなのは。
 私は国男さんの所謂じれったがらない修業が大変よ、何しろうちは何かの巣のような騒ぎで、考えておいて黙って実行されるという一つのこともないのですもの。きょうのあなたのお手紙にパニックは起さずとあり、又向い風とかきかけて消されてあって笑えました。そして、こうやって一人自分のカンシャク姿に笑えるのは、やはり一つの慰安なのよ。こんな紙にこんなにかくと、何もかかないうち何と長々と、お軽の手紙のようになることでしょう。

  小曲

 小さな男の児が
 大きい椅子の根っこで
 じぶくっている

 父親は遂に夕飯に帰れず
 となりの子供たちは
 みんな出払っている休日の夜。

 男の児はじぶくっている
「お父ちゃまとお風呂に入りたいんだよ」ウェーンウェーン

 母親はミシンを動している
 これから生れる子供のために
 椅子の上には
 赤い毛糸の足袋で
 小
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