た。この事に一般の関心と興味の向けられた情熱は一種まことに面白いものであったと思います、うそにあきているのでね。
 そしたら新聞か何かのゴシップに、この頃は彼の研究室に助手となるものがなくて閉口ですって。大笑いしてしまった。それでもやはり先生をしていたのかと、却ってびっくりよ。よく先生になっていますね。肝心の学問がそんなで、根性がそんなで、無上のスキャンダルをおこしながら。石原は原アサヲと一緒になって学校やめさせられたけれども、彼の学者的実力は決していかがわしいものではないのだそうですが。学校もひどいと思います、生徒こそいい面の皮ね。
 寿江子開成山からかえりました。あすこもすっかりかわりましたって。小二里ほどある山のまわりに兵営が出来て来年は寂しい林の間の道に小店が並ぶだろうと云って居ります。

 八月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 八月二十八日  第三十七信
 これはこれで、又妙な飾りつきね。イトウ屋の紙よ。半紙はやはりだめだそうです。九段へは電話をかけておきました。例によって二三日中には上りますそうです。北海道の方は一段落ついた由で、珍しく電話口で声をきき
前へ 次へ
全471ページ中356ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング