きょうは桜草の鉢が机にのって居ります。
『アトリエ』という絵の雑誌御存知でしょう? あの雑誌がグロッスその他の特輯をやるのですって。そして私にケーテ・コルヴィッツのことについてかいてくれと云って来て、私は大変うれしく思って居ります。すこし勉強してかきます、十五枚ぐらい。魯迅なんかがコルヴィッツについてどうかいているかも興味があります。昨夜、ベルリンで買って来た画集出してみて、新しく真摯な仕事ぶりに感服しました。人生的なモティーヴをもっていて。ケーテのようなその級の婦人作家はいなかったのでしょうか、知らないわね。婦人画家というものについてやはり沁々面白く思います、「女らしくない」力量をもった画家として、ロザ・ボンヌールの動物画があげられるけれど、それは女がそれ迄近づかなかった馬市などに出かけて描いたというだけのことです。ケーテなんか女でなければつかまない子供や女の生活のモメントをとらえて、それを深くつよいモティーヴで貫いて、技量も大きいし。日本には二種しか画集がないのですって。その一種は私のもっているの。もう一つの方もかりて見たいと思います。
女の絵としてローランサンなんかが示して
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