たしこれで私のお正月になりました。
 お年玉といえばね、きのう本当に珍しいボンボンをたべました。あんなボンボンこの頃どうしてあったのかしら。ボンボンであるからチョコレート製にはちがいないのだけれど、口がひとりでにそこへ誘いよせられるような工合で、口の中へやさしくうけとったら、かんでなんかしまえなくてね、ボンボンが溶けてゆくのかこっちがとけてゆくのか分らないような濃《こま》やかな味なの。素晴らしいでしょう? ボンボンとはよくつけた名と思います。お美味《いし》い、お美味いというそのままの名なのだもの。フランス人はしゃれて居りますね。キャンディなんて、それは歯でかむものの名です。かみそうな名じゃないの。ボンボン、響も丸やかで弾力があって、本当にボンボンの感覚です。
 こんなボンボン好きみたいなことを書くと、あなたは心配なさるかしら、さてはユリは糖分過剰にならないかナと。大丈夫よ。このごろ、きのうのようなボンボンは決して決してざらにはないのです。
 こうやって、お年玉のお礼だの美味なボンボン物語をしていたら、十一日づけのお手紙着。(十二日)
 そして、何だか折角頂いたお年玉をみんなとりあげられ
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