〇 一・三五
 バンド   一本 六〇銭   五〇   三九   三五   二九
 パッキング 一ヶ 二一    一七   一五   一二   〇九銭
 笠頭    一ヶ 四九    四〇   三三   二九   二八
 笠足       五八    五〇   四五   三九   三三
 曲手又ハ丁字曲  二円   一四四  一二〇   七九   七三
 ※[#「○付き公」、427−6]セメント     一袋    一・六〇
 ※[#「○付き協」、427−7]赤煉瓦  上焼  一等 一個 五銭五厘
 〃石粉 四十キロ入 一袋 一・一〇
  灰煉瓦(黒レンガ)一個 四銭五厘
  煉炭四寸     一包 六十七銭
   豆炭      一袋 一・五〇
   寒水石(何でしょうね御存じ?)十貫 二・〇二
 あなたの御存じの頃の店の物と随分ちがいましょう?

 ○お母さん友ちゃん七時近くおかえり。いいあんばいに達ちゃんは本院にすぐ入院して、面会が出来るようになったら知らせるということだそうです。ごく初期に発見したから大丈夫と、初め見た医者もうけ合ってくれたそうで、本当に何よりでした。安心して、すこしゆとりのある工合でしたからようございました。随分宿もひどくて、その点ではお困りでしたようですが、友ちゃんは髪結いに行ってウェーブした髪になっていたりして、面白いものねえ、生活って。こっちではなれて心配しているのと、その場にあたっている人とのちがい。二十四、五日ごろにでもなればいくらか消息もわかるでしょう。すぐどこかへ行ってしまうのでないとなったら、友ちゃんもいくらかほっとしているようです。一週間ぐらい入院でしょう。
 きょう(二十日)は野原に来て居ります。人通りがひどくなっているのと、農家が店やになっているのとではびっくりです。多賀ちゃんも冨美子も元気よ。きのうおばさんが来られて、けさ一緒につろうて来たの。午後室積へ行ってみます。友ちゃんの机とりかたがた。あすこ初めてよ。ここの空気はやはりまだ昔の野原の空気です。海のある村の空気です。

 七月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県熊毛郡光町野原より(山口県・室積海水浴場の写真絵はがき)〕

 七月二十一日
 今日はこういうところへ買物かたがた見物に出張いたしました。この町を御存じ? 角の写真やさんでこのエハガキを買って角のはす向いの郵便局で書いて居ります。昔のおもかげと今日のいろいろな人の生活とが狭い通りの上に見えます。店にはやはり品不足。

 七月二十二日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県野原より(山口県・室積港(※[#ローマ数字1、1−13−21])、室積湾鼓ヶ浦(※[#ローマ数字2、1−13−22])、室積公園より見たる周防灘(※[#ローマ数字3、1−13−23])の写真絵はがき)〕

 ※[#ローマ数字1、1−13−21]七月二十一日、さっき郵便局でハガキ出してから、ここのはとばへ来て海を眺めました。このエハガキだと、左から二つ目の船のかげの橋ね、そこの根元の石のところに腰かけて海を眺めたらいい心持で、海をわたって松山へ行って見たくなりました。柳井から何時間かしら。海の上を風にふかれながら渡って行って、道後に一泊してみたいと思いました。但実現のところは不明ですが。

 ※[#ローマ数字2、1−13−22]同。こんなところを御存じ? きょうはバスの中からはじめて光井の小学校を見ました。相当たかいところにあって、松の大木のがけです。あの下に避病院があったでしょう? そこを改造して、奇妙な用途にあてられて居ります。新しく共済病院というのや、ガス会社やも出来ていてよその土地から来たものということを誇らかに身辺に漂わしている細君連が室積の町やバスの中に居ります。

 ※[#ローマ数字3、1−13−23]室積の清木《セイキ》という家具屋を覚えていらっしゃるかしら。そこで友ちゃんの机を買いました。中学校の生徒でもつかえるようなので、輝が今に母さんのお古を頂けるでしょう。十一円五十銭也よ、島田までは届けないというので野原まで届けて欲しいとところを云ったら国広屋と云っていました、年よりの番頭が。おばあさんの家は、あの薬屋のある通りに見える松の古木の先ですってね、岩本のお嫁さんのおさとという前も通りました。うちも店は物がありません。達ちゃんから消息まだなしです。

 七月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

 七月二十三日  島田からの第四信
 十九日づけのお手紙今朝。ありがとう。
 本当に涼しいつづきでした。でも、それではお米が大変でしょう。土用前の十日がよく照りこめばよいというのだってね。その期間が雨つづきでこの頃はこうというのでは困りでしょうね。きのう一日は土用らしくて
前へ 次へ
全118ページ中75ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング