全く可哀想です、体のよわいということは、気の毒としか云いようないのだから。でもね余り、特権をふりまわすから、その調子だと母さんにはもっとふりまわして結局体も心もろくになおらないといけないとお灸をやりました。食べものなんか気をつけて気が変ってたべられるようにとしてやるのに、口の先でクチャクチャやったりして。女の子って。
大体女のひとは病気を直すのが下手ですね。これを癒さなければ、というはっきりした目的がないのが多かったり(若いひとなんか)さもなければ、家庭で、目の先のことから気分をはなすことが出来なくてずるずるになったり。
多賀ちゃんのことを思い出します、大丈夫かしらと思って。迚も疲れやすい子でしたから。不思議なほど疲れていたわ。空気のいいところだからやれているのでしょうね。
きょうは、可笑しかったの、朝時間がなくて、大あわてで、帯をおタイコなんかにむすんでいるひまがなかったものだから、小さい帯しめて羽織着て出たら、まア、暑かったこと! 夏なのね、セルを着ている人が何人かありました。フーフーになって、上野から林町へまわって、咲枝の帯をかりてしめて、そしてそちらへ行きました。
あなたはきょうお湯上りだったでしょうか? さもなければ着すぎていらしたのかしら。何かあつそうに見えました。熱なの? そうではないでしょう? てっちゃんはいつも元気そうでした、というから何にも当にはなりません。私は疑わしそうに、いつも、そうかしらと答えます。お大切に、ね。本当に大切に。
上り屋敷でおりてから(真直かえりました)お礼に佐藤さんのところへよったらば、赤坊がそりくりかえって泣いていて、お婆ちゃんが、もてあましているの、さち子さんおなかをわるくして二階に臥ているというので、上って見たら、その声もきこえず眠っている、下では行坊わめいているので、私は市場へ買物にまわる、そのついでに乳母車にのせてやろうと、おばアちゃんをすすめて車にのせてひき出してやったら、ハア、ハア? とふりかえって顔を見てすっかり泣きやみました、そこで上りやしきの駅の横で電車を見物させて、私は市場へまわり買物しようとしたら、きょうは肉なしデーでした。うちの肉屋も一ヵ月に四日休みます、玉子を買うハンコを押したりいろいろして、かえりに魚やへまわって夜のお菜を云いつけて、かえって、ヤレとおしりをおとしました。
夕飯の仕度をする間、どうにも髪を洗いたくて、たきつけて、ゆっくり食事して、さて又ゆっくり髪を洗い、体を洗い、あげくに風呂桶を洗って、さて、ここで一服というわけです。
今度はね、私はちょっとちがった心持で暮せそうなところもあります、一時一人がまるでいやで、今だっていやだけれど、何とかして寂しいのいやで、そうでなくしようとばかり焦立っていたように思われます、今度は何だか寂しくないわけに行かないのなら、どうしてそれをもっと自分のものとして自分にうけいれてしまわないのだろうと不図思ってね。何故うちの人の気なさにこだわってばかりいて、ほかのうちの中までこちらの気持ひろげて暮さないかと思ったら、何だかすこし心持が変化しひらいて、いくらかましのようです。これは少くともこの条件に立つ以上健全なものでしょう。私はね、子供らしいかもしれないけれども、自分がこうして、いろいろにちがって来る条件の中で、いろいろ暮しかたを学んで、段々いつもたっぷりした自分のあたり前の心でいられるようになりたいと願います。面白いことねえ、ある条件が自分にいや、どうかしてそうでないようにしようとする、いろいろ考える、しかしもっと本質のいやなのをうけまいとすると、第一のいやを受納しなくてはならないというの、私面白いと思います。だってね、私これ迄は大体小さい条件は、自分のいやと思うことは変えて来ていて、いやならかえるようにするという形での積極な動きを知っているだけでした。今はもっとそこが複雑になって来て、変えようとそのものをつっつくより、それから先へ何かをつくり出して行こうという――今の場合なんかそういう心持ね。「朝の風」の弱さは、寂しさなら寂しさというものをそれをつっつきまわして追いはらおうとしている範囲に作者がいたから、その感情が映っているのですね。あの作品についてあなたも書いて下さり、自分も申しましたが、何だかハハンと今、合点の行ったところがあります。
寂しかない、寂しくなんかあるものか、そういうのではなくてね、それを、もっと愛して、自分のうちにとってしまって、寂しいとはこういうものかとうち興じるような何かそんな生活の味。
そして、生活は又一層のニュアンスをふかめるのです。向日性というものは寂しいなんて思いをしたがらない、しようとしない、寂しそうになると大いそぎでそれをふき消そうとするアクティヴィティだけでは、浅
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