のをこねはじめます。
 きょうは、うちへ三人の姉弟妹のお客です。二十二、十九、十六という。けさはおKちゃんの兄が豊橋へ幹部候補生の学校で来ているのが、休暇で福島へかえったのが、かえりにより。この家の人たちは、実にうちへ来るのよ、やっぱりあの子がああいう生理だったから心配しているのでしょうね、何だか大変明るくよくなっているのでうれしいと云っていたから、まアようございます。考えると可笑しいわ、つまりうちでは少々もてあまし気味だったのね。でもこちらではいないよりよくて、本人がましになってゆれ[#「ゆれ」に「ママ」の注記]ば、結局は互の仕合わせというわけでしょう。しかし、そういう信頼のエゴイスティックなところ可笑しいわね、だって、うちへよこしておけば大丈夫というのはこっちの責任だけ勘定して、自分がそういう娘をよこすということについての責任は勘定に入れていないのだもの。そういう信頼[#「信頼」に傍点]は面白い。世の中は大部分そういう信頼を平気で適用させているのね。信頼を自分の責任として感じることが少いのね。夫婦でもそうね。
 本年は年賀郵便なし、です全国。どんなに郵便局員は助ったでしょう、あれは殺人的なものでしたから。大変いいことだわ。年賀郵便の形式的忙殺はなくていいから、キントンはほしいわね。食べるものはないが、天気はいい正月と皆笑って居ります。
 おもちの工合そちらはいかがでしょう、変に今年のもちはもたれるという評判ですが。
 島田へ御年始かきました。今年はお母さんおたのしみね、初孫の御入来ですから。名前いかがです? すこしはお考えになった? お正月のひまつぶしにお考え下さい。本の名づけ親から、小さい人の名づけ親に御昇格です。女の子私は桃子というのはすきよ。可愛いでしょう? 宮本桃子ハハア姓と余りよく合わないことね。字面の美感が不足ね。上が重くて。そうしてみると、平たくない字がいいのね。宮本何でしょう、四五月前後ならば初夏に近い気候。友子なんて画が少いから合うのね、私は上の百が長めで、やっぱり合うのね。さっぱりとして生々した名がいいことね、案外初子なんてよくないのでしょうか、宮本初子、わるくないでしょう、正子はどうでしょう、豊田正子がいるからだめ? 宮本正子これは初子よりいいかしら。男の子だったらやっぱり治をつける? 父さんとくっつきますか? 何一というのはどうかしら、こ
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