らいろいろ賑やかには暮していられる由。ただすこしその家は日当りがよくないのですけれども。ちっともしおれてもいず、感心なお母さんです。年を召して、そういう大きい境遇の変化にああ明るく耐えているということは立派なことだと思いました。団子坂を通るといやでもよるようなところ故、折々よってあげましょう。年よりたちは、どこの人も、子供の友達が出入りしてくれることをよろこびます、しんからね。子供への愛がそういう形でてりかえして。
 きのうはちょっと「北極飛行」をよみはじめ、深く心を動かされました。こういう底からの明るさ、信頼、合理的であることの当然さ、感慨無量というところです。あの筆者の性格も何と面白いでしょう、ああいうメカニカルな仕事をする人が、公文書でなんかかけないとあの物語をかく、しかしそれはあくまで科学に立った形象性として。ああいう天質の成長というものの中にどの位文化の多面さ、ゆたかさ、自由があるか、そのことでひとしお感動しました。もし私があの書評をかくとすればそのところにつよい光をあてます。新しい文化の傑出したタイプです。本当に感慨無量で、目に涙が浮ぶようでした。訳者は「小説(文学作品)と
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