しすぎ。
きょうは西の方に真白い富士がよく見えました。とけのこった雪が家々の北側の屋根瓦や軒に僅ずつのこっていて、そこをわたって来る風はつめたいけれども日光は暖い、いかにも早春のような日和です。二月を如月《きさらぎ》というのは面白いことね。夕刻風にふきはらわれて暗くなりながら青くエナメルのように寂しく透明になる空の色を見て、なにか如月という感じがわかるようです。すこし今つかれて。話ししたくなって。
まあ、この炭何と匂うのでしょう、匂うというときれいだが、ガスを出すのでしょう、胸苦しい。ガラス戸をあけ放しにして。
さて、御機嫌はいかがでしょう。ずっと平調でしょうか。七日にかいた手紙で、いろいろ健康に危険な空気のことおわかりになったかしら。御心配下さるといけないと思って。私はいいあんばいに変調なくて居ります。神経の緊張もいくらかおさまりました。
八日はね、大した先約で出かけました、というのはお久さんのところへ。蒲田のアパートに居ります。八日が誕生日なのですって。是非来てくれと、正月に来たとき云っていたので、約束していたので多賀ちゃんをつれて出かけました。六畳のアパートで、それでも窓
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