、心理学の所謂つよいつよいコンプレックスがあるわけです。それをすべて文学の仕事のためにプラスとして転[#「転」に「ママ」の注記]開してゆくということが、つまり私の全生涯の仕事ね。その集合観念を、自分にとって圧迫的なものとせず、且つ知らず知らずそれに圧迫されず、それをよい、モティーヴとして活かしぬくということです。この前の手紙、私は心の病気めいたものをもっていると申しましたろう? あれもこのコンプレックスの一つね。もっともっと私は達人になって自分のコンプレックスを解放する力をもたなければならないのです。そして、それがこれからの小説の方向です。図書館、本当に可笑しかったこと。全部で三冊よ、私の送ったのは。上野、大橋、日比谷。明日は芥川の「河童」について伺います、どこに書かれているのか。

 十一月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 十一月十三日  第七十八信
 お手紙(十一日づけ)ありがとう。きょうのお手紙は本当にいい手紙です。何だか酸素のたっぷりした空気、オゾンのゆたかな空気が鼻腔から快く流れ入るような感銘です。これはほんとにいい手紙です。
 そして、それにつけ、これと
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