ちらの元旦とちがいますってね。おとそしたりしないのだってね。面白がっていた。私は去年は病院ですし、その前の年はミルクホール問題の正月ですもの、ことし位はのんびりしたくて、ちゃんとやったわけです。
 本年は年賀郵便というものは大減です。1/10[#「10」は縦中横]以下です。宮本顕治先生として鱒書房というのからお年賀が来て居ります、廻送いたします、お出先へ(!)。晨ちゃんがよこしています。多摩川保養園というのに入っている様子です。
「人の世の深き苦み笑み耐へて 生きぬく君を尊しと思ふ」こんな和歌がかいてあります。「経過は順調故一層闘病精神を発揮し徹底的に克服するつもり」とかいています。こんな歌をよむ心は、やはり本人もさまざまの感懐があるからのことでしょう。戸ダイさんがアパートで炭なしらしく、賀状もこんなのにてれくさいと思ったら、床やのおやじが電気ストーヴをかしてくれて、手のかじかみがなおったからとかいてくれました。「メーターがおそろしく早い勢で廻転いたします」とあります。炭、米、アパートへは真先にことわる由。そういうのね。
 今年のお正月通信はなかなか特徴的でしょう、おのずから。
 野原
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