へ立ち止って、そこにうつる自分の顔を見つめました。ああ、ああ、この眼! この顔! おぼえず髪をおさえながら、噫《ああ》、だめだ、だめだ、と自分に向って叫んだときの心持。しーんとした明るいすこし西日のさす仕事部屋。
自分のとらわれたものが何であるかがわかったときのおどろき、よろこび、重大さへの直感。そんなものを表現することも考えず出かけて行った夜の街。面白いわねえ。何て謙遜であったでしょう。
それでもねえ、そんな心の一方には、十六日に書いているような心の部分がきわめて自然発生の環境的なもののまま存在していて、やっと今、つかまれたりしているというのは、何という複雑さでしょう。私は、あの日(十六日)かえる道々大変その気持の変化について考えて居りました。そして、考えたの、本当に隅から隅まで妻なら妻を好くことが出来ることは、なかなかあり得ないことだと。自分が、わるいというのではないが、好きといえないもちものをもっていたことをはっきりわが目でみれば、いかにも沁々それが思えました。そして夫婦というものをあわれにも思いました。愛してゆく、というのは、どういうことなのでしょうね。私は好きだから愛す、
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