家は、題材さえ手近くつかめばすぐそこへ、自分を放射してしまう。そういうひとびとは、テーマの真の美しさ、輝しさ、心を魅する力をおそらく終生理解しないでしょうね。
好ちゃんの愛読書である「谷間のかげ」から、段々熱中してしまって、上下二巻の創作物語になってしまいました。
それというのも好ちゃんのひとかたならない生活態度が私を心から感動させる為です。同感して下さるでしょう。私は好ちゃんのことを思うと、よく感きわまって、あれの前に膝をついて、無限の劬《いたわ》りと善意と希望とをこめて抱擁してやりたい心持になります。あらゆるよろこびをよろこばせてやりたいと思うの。これも同感でしょう? そしてね、人間としての素質の見事さを全面的に発育させたいと思うの。そして、それも全く望みのないことではあるまいとも思います。何より幸なことには、彼は文学がわかります、この天のたまものの力で、私が幸もし益※[#二の字点、1−2−22]いい作家となり、縦横に文字を駆使する法力を身につければ、詩や戯曲は、これまで到達していたフォームとリズムをもっと進めて、リアルな趣で、更に成熟へすすめるのだろうと思います。
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