ずから力の集注された表現で開始されるのは自然ですもの。しかも傑作ほど思わせぶりなく主題に入るというトルストイの意味ふかい技法上の必然は、あらゆる場合の真実であることもどんなにつきない興味でしょう。作品の主題そのものが、最初の章では自身のそれから先の展開を知らないで、自身に加えられる展開のための力に従順で、真白い紙をしずかにのべて、様々の方向からの描写を与えられてゆくうちに、いつしか作者とテーマ自体の動きとが一つに起伏しはじめて、作者がテーマをすすめてゆくのか、作者がテーマのリズムの緩急につれて次の章からより深くより密接な次の章へひかれてゆくか見わけのつかないときがはじまります。
この中頃のめりはりの、すきまのない精神活動の振幅というものは、いい作家たちほど激しく大きく変化の妙をきわめますね。そして、この過程で、テーマの奥の奥まで作家の筆がたっぷりとふれられてゆくか行かないか、それもきまる。テーマが最後の完全な昇華を行うかどうかもきまります。作家が全力をつくしテーマは自身のうねりを絶頂に発揮する、こういうときの見事さ。
あなたはヴェートーヴェンの交響楽のフィナーレにある、あの一つの迫
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