から、どうしてもAだのBだのとさわがなくてはならないわけね。日本の作家は、そんなに悠々仕事してそしてやってゆくだけの経済基礎がないから、みんなあくせく消耗してしまうのです。代表作集――これは十四年度を御覧になったのでしょう? 果してこういう名にふさわしいのでしょうか、うたがわしい。十五年度の編集がはじまって、それには「三月の第四日曜」が入れられますが。そうよ、健全さ、精神の健全さというものが、高く評価されなければならず、精神の健全さは、すぐもんぺをはく形ではないというところが、今日の健全さへの常識とのたたかいとしてあらわれたりする時代です。生活の意欲に方向がないから、一皮はげばデカダンスかと思い、その逆と云えば、いいとっちゃん的人情世界への沈没かと思ったり、その点浮きつ沈みつね。文学における人間性の課題は、現実にはそこのあたりを彷徨して居ると云えるのでしょう。
 外的なものが作家に与える腐蝕作用を、いつか書いたときのお手紙よりも、このお手紙が作品のあれこれにふれての上なので、やはり実感として見られていて身近な思いです。こんな場合もあるのよ。稲ちゃんに「分身」という小説があって、それは自
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