した。あなたの御存じの頃があれで一番住よい条件のあったときでしたね。
パニック的手紙のこと、いつかも書いたように幸《さいわい》大分わかって来て、本質的に所謂気にすることも少くなって居りますから大丈夫よ。夕立をやったとき、あの日は一日時々晴れた空からパラパラと来てね、そして、パラパラ雨をふらしながら、生活って何と面白いいいものだろうと思いました。あんな狭っくるしい、あんな短い時間の間にも、やっぱりああいう形でつい溢れるものがあるのですものね。そして、私はあなたに対して腹を立てている自分、あなたを恨んでいる自分をさがし出そうとして心の底をいくらさぐってもどこにもそういうものが無いので、大変不思議でした。ずーっと心の水底へ鏡をしずかに投げてやると、その小さい鏡は沈んでゆきつつ悲しさを映してはいるけれど、憎悪のかげはどこにも映すことが出来なくて、底に落付いたときには、その鏡の面一杯になつかしさが照っている、大変面白い気持でした。私たちもこうして暮して、九年の月日が閲《けみ》されたことを痛切に感じました。そんないろんなことから思いかえせば、あの夕立、やっぱりなかなか可愛いと思います。
それに
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