つぞやのお手紙の中にモチーフが豊富になるように云々と云われていたことについて、それがモチーフと云われている味の深さをよろこんでかいたことがあったでしょう? モチーフとテーマということの今日の文学でのありようは風変りです、つるさんの評論集の中に、このモチーフについて志賀が、テーマはあってもモチーフが自分のなかに生れなければかけないというのに対して、横光は芸術のモチーフというものを知らないのね、自分の感覚として持っていないで、世界像を整理しようとする意欲としているのは面白いこと。この二三年はこのモチーフを知らず意欲を知っている連中の仕事師ぶり、生活ときりはなされた題材を平気でまとめてゆく意欲がバッコしているわけです。モチーフというものが、生活と芸術とへの全く積極的な態度なしには生れないというところは面白いし。又自分としては過去の何年かに書いたものの、その点モチーフの的確さの点でいろいろ省るところがあります。又そのことばではなくても、あなたがいろいろ云っていらしたことについて。モチーフのゆたかさは、生活感(芸術家なら当然そこに芸術家としての勘も入っているものとして)の鋭さ深さ、生々しい柔軟さ
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