でしょう? では残額八二・六六銭のうちから二十円五十七銭引いたもの六二・〇九銭支払えばよろしいわけでしょう。
 あついことね、この二階もややましな蒸風呂です。

 七月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 七月二十二日  第四十六信
 先ず七月十日づけの、ゴロゴロ第二信十九日に到着、どうもありがとう。おくれるというのも折にふれてはなかなか愛嬌のふかいものです。これは、ピカッ、ガラガラとはゆかず、きょうこの頃の私の胸のひろがりのなかでは遠雷のとどろきで夏らしい調子です。しかし勿論このことは、いきなり私がベソをかかないというだけで、書かれていることを、どうでもいいとしているのではないのよ。
 そして、私は何となくすこしニヤニヤもするの。だって、時々こうしてあなたが私に雷をお落しになるの、万更あなたのためにわるいばかりでもないでしょうと思って。それは、そのときは島田言葉の所謂「歯痒い」わけですが。お父さんの所謂「卑怯未練な」(これ覚えていらっしゃる? お母さんが手袋を一寸見えなくしておさがしになったとき、お父さんが床の上に坐っていらして、「ええい、卑怯未練な」と仰云ったので
前へ 次へ
全590ページ中303ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング