るをたべて、そちらへ行って、かえって、夕飯前一休みして、夜又いくらか生気を戻す。そういう時間割にしたいと考えて居ります。勝手ですけれど。一番暑いときでなく[#「なく」に「ママ」の注記]て御免なさい。一番でも十時でなければかえれず、落付くのは午後となって、それではどうも工合わるうございますから。
 さア、きょうは、あつくて、くたびれて、脚がはれているけれど、心の中でたのしい心持のふき井戸の溢れる音をききながらいそいそとして家へかえります。朝の眼のなかによろこびがあるという、リフレインのついた小さなうたがきこえています。あの眼のなかに生きているよろこび、よろこびの可愛さ。あこがれのいとしさ。いとしいあこがれも信頼の籠に盛られれば、それは朝々にもぎたての果物のよう。そういうソネットを、ゲーテが書いたって? うそでしょう。そんな痛みのように新鮮な献身へのあこがれを、ゲーテが知るものですか。天才の半面の俗物という批評を、そういう詩趣を解さなかった生活に帰し得るのですもの。
 刺繍の模様は一輪の花でした。[#図4、花の絵]こんな花弁の。一つの花の花びらですから、どの一|片《ひら》もむしることは出来
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