お祖母様だったという方でしょうと思って、御焼香いたしました。お父上のは三回忌ですから仏壇に飾る「うちしき」というものをこしらえてゆきました。金襴《きんらん》なんかこの頃織らないのですって。ですからうちにあった丸帯のちゃんとしたふさわしいのを切ってこしらえてゆきました。立派で御満足。それから御膳を頂いて(ホラお平《ヒラ》にパンなんかのっているようなお膳)それからお墓へ詣り、それから達ちゃんと私とが代表で野原のお寺へゆきました。あの辺の道は何と変ったでしょう。お寺の下の道ね、あすこをずっと山へ切り通しをつけて拡げ、三つの池のある淋しい優しい風景だったところ、あの辺はすっかり赤土が露出していて貯水池をつくることをやっているのですって。土方、トロその間をハイヤがひどくゆすぶれながら走りました。昔、少年が自転車で通った山の道はもう思い出の道です。私でさえマアあすこがとおどろいて目を見はります。トロの踏切り番をどっかのおかみさんがやっている。女土方がどっさり居ります。
 島田川は水枯れで、酒場ね、何とかいう大きい、あすこの先のとこから光井の工場へ直通の大道路ができて居り、それとは又ちがってお寺の山
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