ずっとうしろの山の方です。家を出て裏の畑へ出て、新しく出来ている六間通りを一寸行って右へお社へのぼります。お社のところよく覚えていらっしゃるでしょう? あの右手の山々にずっとクラブや官舎が出来かかっているのです。お社は昔のとおりです。多賀ちゃん曰ク「東京で考えていたよりずっと奇麗さがへっちょるようだ。」お鈴を鳴らしてなかをのぞいたら、「宮本捨吉明治三十年奉納」の豊公幼時の胆と矢矧《やはぎ》の橋の上の小六の槍の石づきをとらえている小さいごろつきのような豊公の絵があって大笑いしました。それも覚えていらっしゃる? お社のお祭のときはあの石の段々に蝋燭の火をずっとつけつらねるのですってね、それは小学校の女の子の役だったのだってね。
 お宮の裏に小松と山帰来とひうちごろの生えた砂山がありますでしょう? あすこはまるで小公園ね。すっかり水無瀬島から下松から室積が展望されますね、ああ気持がいい、いい気持、と私はよろこびました、松の梢がぎっしり古い松ぼっくりをつけていて、若々しく青い松ぼっくりも出来ていて、古い松ぼっくりはおじいさん、若い松ぼっくりは少年という風情です、あの山のいろんな茂みの間を、カス
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