のです。桃子は、たっぷりやでね、従兄妹同志というようなことで、安心して子供を生めないというようなのはいやなの。「順助さん、従兄なんかに生れて来るんだもの」そういう娘。順助さんは若い勤め人。友人の妹ともしかしたら結婚していい心持になるが、娘と親とは順助が出征するかもしれない――殆どする、ということで進まない。順助はだから結婚生活をもしておきたいのに。桃子にはそれが分るのですが。今日の若い娘とその周囲とは結婚がむずかしくなって来ているにつれて女の生活の安定の目やすから対手を見る打算がつよくなって来ている。反面、青年の心にはもっとずっと人生的な思いで、妻というものを考える心持がある。それは女の今という時代を経てゆくゆきかたとちょっとちがっていて、男の心の寂しさです。桃子の母は、つとめている娘は猶対手が見つかりにくいと云ってこの頃は気を揉む。だが、それならつとめをやめていつ誰があるというのでしょう?
 現代のそういう問題をかいて見ようという次第です。三十枚では無理? こんなことでもフランスあたりと若い女の歴史の経過しかたが大変ちがって、桃子はそのことも考える、そういう娘です。題はまだないの。

前へ 次へ
全590ページ中216ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング