うたわれていて、ふきならす音は冴えて笛がふくひとか、ふくひとが笛かという恍惚を単純な言葉のなかに溢れさせています。「われもうたびと、その笛を」といのちをうちかけてゆく姿は何といいでしょう。
私は自分ではたった一つの詩をかいたこともないけれども、詩のわかることにおいては、そこいらの詩人の比でないとひそかに持するところもあるのですが、いかが? そして、あなたがどんなに詩を知っているのかといったら、おどろく人もあるだろうと笑えます。ああ現代の散文の本質はそこまで来ているのにねえ。評論の要素はそこまで活々として多彩であるのにねえ。評論はただ理屈の筋でかくものだと思っているバカ、バカ。もしそういうものならば、どこから私は評論をかく感情の必然をもっているのでしょう、ねえ。その必然の詩の精髄が分らないから、つまりひとは私をまるで知らないということになってしまうわけです。
あなたはまだ足袋をはいておいでですか。きのう、ある女のひとでずっと反物を買っているひとが来て、あなたによさそうな紺ぽい単衣を見つけてホクホクです。羽織の下におきになるようなの。
セルのこと、きょうおっしゃったって? 急にあつく
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