がして買うと一円二十銭ぐらいのところです、ものによっては三倍以上です。紙がないばかりでなくものによって上るのですから。人間にあてはめると、それに準じて価上りなわけですね。表現は妙な形体をとるが。逆のような。
重治さん、つとめやめた話[自注1]をおききですか、円満辞職の由、ほっとしたでしょう。きっとモンペはいて、ヤヤと頭ふって、庖丁といだり干物をとりこんだり、ガリガリ頭かいてふけを落して眉間に突如竪皺をつくったりしていることでしょう。詩人出のひとって妙ね、鶴さんきょうこの頃はズボンの先のうんとつまった洋服姿で長火鉢の前に居ます。私評して曰く「毛のぬけた軍鶏《しゃも》に近い。」本当です。
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[自注1]重治さん、つとめやめた話――中野重治は、市の知識人失業救済の仕事に勤務していた。
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四月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(木村荘八筆「庭樹」の絵はがき)〕
四月二十七日、只今丹前を送り出します。あれをかってかえりに、偶然こんな展覧会を見ました。色がないからつまらないけれども。荘八は荷風の「※[#「さんずい+墨」、第3水準1−87
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