にかいて下すったお手紙、けさ(七日)つきました。私は、ですから何だか毎日手紙頂いたような気よ。第四信とありますが、五信よ。
森長さんへのこと、岡林さんへのこと。わかりました。それは結構でしょう。森長さんへ二度目の分ほどいるでしょうか。今すぐわかりません、というのはね、何しろそんなわけで、大蔵省方面の条件の整備について、私大いにまわらぬ頭をひねっているのです。ところがそっちがまだ大体のプランというところまで組立たないので、この二三日のうちに底をはたいていいのかどうか。ちょっとお待ち下さい。それを条件に入れてプランを立てて見ますから。不得手中の不得手でどうもすみませんが。
『東京堂』一月号のこと、きょう、この手紙と一緒に送り出します。「風と共に」は第一の方でしょうと思います。世界名作全集が四五月ごろから中央公論から出ます。これはいくつもそんなプランのある中で一番いいでしょうから買います。一番下らぬのが新潮の。
地図は『年鑑』の附録の方でしょう? テリヨキのあるのは。
寒暖計いいでしょう? 買いました。水銀にあかい色のついたのです。お湯のだものいいわねえ。本当に実用的で親愛で。特製詩集は、表紙の装幀に何かの実《み》のようなふっくりした薄赤い二粒の円い珠飾りのついたののことだろうと思います。ありがとう。よろこびということばを、ひとくちに浅く云わず、その一つ一つの響きを大切に区切って味うと、これは何と深く立体的な句でしょう。心の峯々のようなボリュームさえあります。詩集が私の生活にもたらされてから、はじめてそういうよろこびの感じが実感のなかにとらえられているのもうれしいことです。この頃ひらく頁には、希望という句もあるのですが、それは非常にユニークなもので、何というのかしら、希望の先駆、それは人が希望と呼んでいるそういうものになるのだろうかというような極めて複雑微妙な格調のものです。ニュアンスのごく濃いものです。よろこびの豊富横溢している数章と、この希望のそよぎは風の中にあって、という句との間には、時間という虹のそり橋が描かれています。しかも、瞬間に圧縮されるめずらしい形での生活としての時間が描かれていて、なかなか興味つきぬものがあります。插画が作者たちの手で入念に描かれていて面白いこと。
紀さんは、なかなかよく経験して来ています。責任(部下の生命その他)を深く知って来た
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