異にあらわれているものから、主観的に自分の病気をはっきり感じたし、客観的に時代を感じたわけでした。そして、あれがそれらの点で底をついている作品であること、一度は通過しなければならなかったけれど、二度とくりかえせないものだということを明瞭に知ったわけです。
 そういうことについてなど、弱点を、私はきっと誰より深く理解していると思います。そういう意味でなかなか意味ふかい作品でした。一生に一つしか書かないような、ね。
 しかしながら、あすこにある情感が偽りや拵えものでないことは、それが読まれたのちのニュアンスでわかることでもあります。小説って面白いわね、本当にいいわね。こわい程興味がありますね。小説を書いてゆく、腕でかくのでなくて、自分の肉身からかいてゆくと、そこに何と面白く、複雑な錯綜も顕出して来ることでしょう。胸を抑え覚えず片膝ついた姿がそこに現れているにしろ、やはり其は親身なものです。
 勿論大丈夫よ。もしそういう状態にいつもいたとしたらそれは既に一つの心の病気ですから。
 小説のなかには私は一つの病気をばくろしていると思います。それは、夫婦の情愛についてです。私はそれをやさしい思いでしかかけないという現在の病いをもっていて、これは真面目に成長しぬけてゆかねばならないところだと思っています。(「杉垣」「朝の風」そのほか短篇)
 長い小説で、私は力一杯自分の小舟を沖へ漕ぎ出す決心です。
 この実業之日本の本に比べると、高山の方は文学に関するものばかりで、又それぞれの味をもっていることでしょう。こちらの本での柱は、明治大正文学の作品の研究でしょうね。
 感想や評論をかくときは、益※[#二の字点、1−2−22]はっきりとしてわかりよく語られる歴史の見とおしというものを失わず、ゆきたいと思います。主観にかたよらずに。現代の文化の正常な前進にとって一番大切なものは、そういう視野のひろさや平静さや弾力です。
 小説では、私のこの心一杯のものを、ごくひろいところまでグーッとおし出して、人々の生活への共感に活かしてゆかなければなりません。
 晨ちゃんの論文は、大変|粗笨《そほん》でした。政治と文学のことを論じ、各※[#二の字点、1−2−22]のちがった特殊性を明かにして、二つのものが協力出来るのは、政治が現実の直視をおそれないときに可能であると云いつつ、その可能性の現実的観察はされ
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