からね。けれど、つづきなしでも、私としたらやっぱり全然きかれる筈でない種類の質問という感じはあるでしょうね、きっと、いつきかれても。生活全体の感覚の問題ですものね。こんな気持も面白いと思います。人間の生活感情にいろいろなかんどころがあるのね、そのことに関しては敏感であるという、かんどころがあるのね。
仕事のやりくりのことは、私もこのお手紙をひろげて眺めて、しみじみどういうことにしようかと考えて居る次第です。
林町は、いつも私がいるというのではないところである方が種々の点からようございます。喋ったりとはならないけれど。もっと別のことで。
長いものかくのには、やっぱり特別にやりくりの必要があることがわかりました。今年福島へゆこうとは思って居りません。あすこは、いろんなものの不自由はないけれども、私はせめて一週間に一度は来たいわ、或は十日に一度。それには福島は遠うございます、急行で五時間。しかもこの頃の上野のこみようは殺人的で、入場券を売り出さないのですから。鵠沼だと電車(小田急)で、電話もかかり、いざ急用というとき安心だし、どうだろうと考えて居ります。いつか(二月十三日)一晩とまりに行ったとき、離れを見て来た話、一寸いたしましたろう? あすこどうだろうと考えます。国府津、たった一人は困るわ、誰かつれてゆくとこっちが又一人になって困るということになるし。鵠沼はただいくら位でおくのか。親切でもなさそうな宿でしたしね。あなたも御存知だし、国府津がもうすこし面倒くさくないといいけれど。うちで、散々「おかず何にしましょう」で、又それがくっついてまわるのは沢山というところもあるの。これまで私は東京をはなれたくない自分の心持の面だけ肯定していて、何とかやりくろうやりくろうとして居りましたが、こうして、あなたも力をつけて下さるとうれしいと思います。思い切って出かけて仕事する気になれて。「婦人作家」のすっかり原稿わたし、評論集の原稿わたし、必要な前がき後がき皆わたし、そんな仕事の間にゆく先をきめます。毎日五枚書くとして四百枚はマア三ヵ月ね。本年一杯ですね。
ふっと考えて、もしや今稲子さんのいる保田の二階、あとをかりようかとも思います。東京から一時間とすこし。二階だけかりるのね。ここにはずっと住んでいる人もあるし、いろんなものに不自由しまいかと思います。これで、こまごま何がない彼が
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