チな色調でようございます。
『第四日曜』の方は松山さん昔のような表紙かいて、いろいろふさわしくないので気を揉んでいます、あした行って何とか相談しなくては。表紙は楽しみで、心配よ。なかなかいいのがありませんですから。誰のにしろ。『暦』は傑作の部よ。でも、木版にはしないのだから、あのような効果では駄目だし、私の小説は又花の表紙でもないし。
私が七月三日迄にしなければならない仕事、例によって婦人のためのもの三つで六十枚とすこし。『文芸』の二十枚少し。大したものでしょう? お察し下さいませ。おっかなびっくりの『朝日』が女性週評をたのんでかきます、ごく短いもの。でも、ね。今月はいくつもおことわりをしてやっとこれだけ、どうしてもやめられない分を。
夜速達頂きました。表、殆ど出来て居ますからそのように計らいます。ハラマキ、白い着物、もうそちらでしょう。鉢植は元気でしょうか。ガラス一枚に射す電光の光景を髣髴《ほうふつ》として、雷をきいて居りました、妙な梅雨ね。ゆっくりして詩集の話を書きたい心持です。寝冷えなさらないように。
六月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
六月三十日 第四十三信
いまやっと一かたまり仕事を片づけたところ。そして、この紙をひろげていたら、デンポー。承知いたしました。明朝そのようにしてもってゆきましょう、但、今大観堂は目録をもっているでしょうか、あやしいと思われます。本のネがピンピンでしょう、ですから目録つくれないかもしれないのです、いつぞや目録欲しいと云ったらありませんでしたね、昨年のこと。
お手紙ついたら書こうと思っていたのに。まだよ。
さて、よくない気候ですね。体が疲れやすくて閉口です。さぞそうでしょうね、おなかは大丈夫? あさっては御苦労さまです。雨が二十五日から本腰で、島田の方はやっと田植が出来ました由、お母さんのお手紙。友子さんがうちのことをよくやって、達ちゃんの好きそうな料理もこしらえて、と本当におよろこびで何よりです、全く見つけもののお嫁さんね。あれで達ちゃん、お母さんのおこしらえになるものは勿論何とも申しませんが、おかみさんがまずいものしかつくれないとむくれる方だから、本当によかったわね。お盆になる迄お里へ行くにも及ばないって云っている、それもうれしそうにおかきです。それは友子さんとしても決してわるいおよめの口
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