はなしは、いつになっても、どのような話しかたで話されても、本来の愛らしさ、献身、よろこばしさの失われることのない物語です。私は沢山のヴァリエーション、かえ話を知って居ます。覚えていらして? 激しい待ちもうけの裡で眠っていた泉が、初めて活々とした小人の魔法で段々目ざめ、やがて美しい虹をかけながら湧き立って来たとき、何とも云えない呻り声で、びっくりした小人が見まわしたら、泉守りの仙女が草の中に失神しかけていたというところ。素朴な仙女がよく描かれていて、私たちは好意をもって笑いましたね。
 おいしいものについての御注意もありがとう。全くおいしいものにも様々あり。
 体温表のこと。それよりも、消燈・起床をやかましく気をつけた方が合理的のように思われます、今の状態では。どうでしょう。だって熱は五・九ぐらいから六・六の間にきまっていて、それをとるのは、私には何だか只形式のようです。私は種々のよくない習慣をもっているかもしれないけれども、一つほめられていいことは床について横になってからは、決して本をよまないということです。床に入ってからは、いつも仕事のこと、考えたり、親しい物語を描いていたりなかなか
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