なったのだろうと感じて、幾条も光の箭《や》にいられたような体じゅうの気持で、なかなか眠れませんでした。
 いよいよ寿江子の絵が出来上りました。本人は失敗失敗というが、それでもこの室のこの隅からの感じはわかる。これに補足として光子さんの細部的なスケッチが大に役立ちますね。寿江子は室内のあの安楽椅子辺から描き、光子さんのは丁度、私のねまきの干してある浅い手すりのところへ出て、ひろく外の景色を描いていて。光子さんの方の絵で見ると右手の煙突の先に[#図3、右手前に煙突、煙突には三角の屋根、左奥には家の屋根の左端を描いた絵]こんな形に屋根の見えるところがあるでしょう。これがもとの家の屋根に当ります。寿江子の方のでは右手のギリギリのところに濃くこの形で屋根の遠望があらわされているところです。元この家にいたころ、更に奥の大きい屋敷は建っていず、何とかいう人の花園でした。左手に黄色っぽく洋館がある。それも花園の一部でした。二枚とも御覧下さい。今に、この六畳から出た廊下の北窓からの眺望や物干の眺めをおめにかけます。これから私はすこしスケッチをやって見ます。今も寿江子に云って笑ったの「だってくやしいよ、一
前へ 次へ
全766ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング