ての研究ではイギリスのクウィーン・ヴィクトーリアの少女時代をしらべたものなどイギリスの研究にまさっているという面白い現象もあります。デュアメルが、この特輯に短い感想をかいていて、いろいろわけのわからない考えかたもあるが、なかで、文化と文明、カルチュアとシビリゼイションとを互に関係しつつ二つは一つでないものとしているところは当を得ています。地球の各地におけるカルチュアは即文明ではなく、文明はその総和的な到達点としての全人類的水準であるということを云っている点では正しい。近代ドイツがその事実を理解しようとしないのは遺憾であると云っている。だがそこがデュアメルで、一転して文明は少数の天才によって高められるという点を強調していて、同時に、所謂実際的な国民が無用と考えるような或知性が人類の精神の成育のためには欠くべからざるものであるとも云っている。いろいろ興味があります。今日の日本文学における長篇小説の問題と、これらの長篇の含んでいる問題とを比較するとこれ又面白く、やはりフランス文学の深い奥行きを考えます。そして世界じゅうの呻きが、小説の世界にも反映していると感じる、其々の声の色、強弱をもって。
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