決して決して御心配なく。私は大体そういうことは出来ないたちだから大丈夫です。食べるものだって。御心配頂くのも可笑しくて且つ大いに満足ですが、これも大丈夫よ。
 私の今年は、やっと十七日ぐらいからはじまるという感じです。病気は去年のうちにつづきになって入ってしまっている。そして、思い出すと、ああ苦しかったナ、と思う。沁々そう思って思い出します。麻睡薬がさめかかって来て、傷をいじられていた間の、あの独特なひっぱったり圧迫したりの感覚を思い出すと、あのとき通り唸りたくなる。医療的な経験でさえこうなのですものね。金属性の関節のついた、手のひらや指の代りに鉤のついた道具を眺める人々が、思い出す思い出はどうでしょう。
 本のこと、「女一人大地をゆく」は新本がないのです。古がなかなかない。私のは線だらけ。そのためにおくれている次第です。「使徒」は十二月初旬に新版が出るというので注文中のところ、「母」や「大地」ほど売れないからと見えてまだ出さない。そのためにおくれました。旧版のサラが見つかりましたから一両日中にお送りいたします。タイムズの地名人名はこれもまだです。十二月十八日と云っていて、二十日すぎと
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