たえました。〔中略〕
 中途でお客があって(主役は当年二つになる女の子です泰子という。私が名づけ親なの。)又二階へ戻って来たが出かけた連中はまだ戻って来ない。
 子供の話になりますが、てっちゃんのところの娘、これはやす子ではなく康子とした由、生れるとき難産であったために鉗子《かんし》という鉄の道具で頭を挾んで生ましたところ、産科医の云うにはそのために片方の眼に白くかすみがかかっていて、瞳孔をも覆うているそうです。松本夫人[自注1]が目下風邪だが癒ったらすぐ行って見てよく研究するそうです。可哀そうね。てっちゃんもやっと昨日その話をした、その心持もわかります。眼は親もぐるりも辛いものです。
 いずれにせよまだあしたあさっては出かけられないわけですがどうぞ呉々もお大切に。〔中略〕そろそろ風のないひる頃ゆっくり外を歩きます。のりものになどは乗らず。家のぐるりの散歩に。風呂は毎晩入っています。一つの望みは夜もうすこし楽に眠ることです。まだ何だか寝苦しい。夢を見たり不安だったり、熱はもう先のようにとらないでいいでしょう? 赤沈などひどかったわけですね、絶えず腹内に炎症があったのですもの。くされもの
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