九日にはすっかり下熱して、初めて六度。三十日には初めて椅子にかけて食事をし、そちらへの手紙も書いたという風でした。
こちらでは、私がのびてしまうと万事ばね[#「ばね」に傍点]がのびて利《き》かなくなって不便です。そちらへも寿江子としたら珍しくよく足を運んでいてくれますが、こちらがへばってボーとなっていると、それに準じて運転が鈍ったり止ったりする。これはどんな場合にも一番困ることですが、寿江子にしろせいぜいのところでしょう。栄さんが丁度工合をわるくしていたことも不便の一つでした。今度の経験から、一つきまりをこしらえておきましょう。万一私が病気その他で動けなくなったら、きっとその容態や情態を知らせ、又そちらからの用をきく役目を一人それにかかって貰うようにきめましょう。規則的な目的なしに暮している人々を、急にキチンと動かすことはこっちの気力がつかれて、この間のようにへばっているとつい及ばなくなってしまう。心配させっぱなしでわるち思っていたのに、本当に御免なさい。それでも、寿江子の体が少しましになっていたのでどの位助かったかしれません。
世話してくれた人たちへのあなたからのよろしくは十分つ
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