私が女だけに厄介です、口を利くと何か対手の興味は身の上話的になるし。アパートには又それとしての不便がある。でも、あっちを根城としておけばやれないこともないでしょう。勤人の多いアパートが同じならよい。学生の多いところはこまります。どうせいれば誰かということは分る。一つ構えの中でのお客が多かったりしては。生活というものは生きているから、居るところに生活があるわけですから、あっちこっちせず、そちらに大部分暮すにはそれだけの条件が入用ですから、よくしらべましょう、(ひさが来月に入ってかえって来たら)そういう生活をやって見るということには興味があります。人々の中での生活というところが。机だの何だの鍵のかかるのにしなければなりません。親かぎでいくらでもいないとき開けて入れるのですから。誰が入るか、それも分らない。そこがいやね。一人はだからいやね。一つの家なら其だけはないが。空巣のほか。一番いやなのはこのことと手紙のこと。
毛糸足袋のこと、底が切れた話。切れてよかったこと。去年まるで底がいたんでいないのを見て、その底を撫でつつ、ああと考えたことを思い出します。切れたというのはうれしい報知です。春は
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